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書道家とテストの正解が違う?書き順に隠された60年前の妥協

  • 執筆者の写真: ゴーディー
    ゴーディー
  • 5 日前
  • 読了時間: 4分

大人になってから、ふと「自分の漢字の書き順って正しいのかな?」と疑問に思ったことはありませんか?


実は、書道界の大先生が書く美しい文字の書き順と、小学校のテストで「正解」とされる書き順が異なるケースは珍しくありません。

「えっ、正しい書き順って一つじゃないの?」


そう思ったあなた、大正解です。実は今の学校で教えられている書き順の裏には、約60年前(昭和33年)に政府が下した「ある苦渋の妥協」が隠されているのです。


1. 書道家と学校テストの「書き順」がズレる具体例

まずは、実際によく揉めがちな漢字の例を見てみましょう。

「右」と「左」のナゾ

小学校で習う有名なルールです。


  • 「右」の書き順:①ノ(はらい) → ②一(横線)


  • 「左」の書き順:①一(横線) → ②ノ(はらい)


学校では「右はノから! 左はイチから!」と厳しく教わります。しかし、書道の世界(行書や草書など)では、必ずしもこの通りに書かれません。「右」を横線から書いた方が滑らかに次の画へ繋がることがあるため、書道家は前後の文脈や美しさで書き順を変えることがあります。


「上」や「必」の空中戦

「上」という漢字、学校では「①縦、②短い横、③長い横」と習います。しかし、古典的な書道の世界では「①長い横、②縦、③短い横」という順序で書かれることも非常に多いのです。


「必」にいたっては、学校の書き順(ソみたいな部分から書く)通りに書くと、書道的には全体のバランスが崩れて美しく書きにくいとさえ言われています。

では、なぜこのような「二つの正解」が生まれてしまったのでしょうか。



2. 昭和33年、文部省が下した「妥協」の決断

原因は、1958年(昭和33年)に当時の文部省が作成した『筆順指導の手引き』という一冊の冊子にあります。

戦後の日本は、教育の普及を急いでいました。しかし当時、漢字の書き順は地域や学校、流派(書道の家元など)によってバラバラ。現場の先生たちから「基準がないとテストの採点ができない! 指導に困る!」という悲鳴が上がったのです。

そこで文部省は、書き順を一つに統一しようと試みました。


しかし、ここで大問題が発生します。

  • 歴史や書道の伝統(美しさ重視)

  • 国語学や学術的な根拠(理屈重視)

  • 子供への教えやすさ(効率重視)

これら3つの視点で、専門家たちの意見が激しく衝突したのです。どこかを立てれば、どこかが立たない。

そこで文部省が出した結論が、「とりあえず教育現場の混乱を防ぐために、学校で教える標準を『一つだけ』決めよう。ただし、これが唯一絶対の正しい書き順というわけではない」という、究極の妥協案でした。


3. 手引きに明記された「衝撃のワンフレーズ」

実は『筆順指導の手引き』の冒頭には、今でも語り継がれる重要な注意書き(原則)が書かれています。そこには、以下のような意味のことが明記されています。


「ここに示された筆順は、学校教育において指導上の混乱を避けるためのものであり、これ以外の筆順を誤りとするものではない」


つまり国は、「テストで採点しなきゃいけないから暫定的にルールは作るけど、他の書き順が間違いってわけじゃないからね!」と、60年前に公式に宣言していたのです。

しかし、この「柔軟な前提」は時代の流れとともに忘れ去られていきました。いつの間にか教育現場では「手引きの通りに書かなければバツ」という、厳格な一発アウトのテスト文化だけが一人歩きしてしまったのです。


4. 漢字の書き順の本質とは?

漢字はもともと、中国から渡ってきた「生き物」のようなものです。歴史の中で、より速く、より美しく書くために、何パターンもの書き順が自然発生しました。

書道家がテストと違う書き順をするのは、間違いだからではありません。


数千年の歴史が証明してきた「文字を最も美しく配置するための骨組み」を、体で理解しているからなのです。

逆に、学校のテストでバツをもらう子供たちは、間違った文字を書いているのではなく、「昭和33年のマニュアル」からはみ出してしまっただけと言えます。


書き順は「縛り」ではなく「ガイドライン」

もし子供が学校のテストで書き順を直されて落ち込んでいたら、ぜひ教えてあげてください。


「それは学校のルールだけど、書道の世界では君の書き順も正解なんだよ」と。

書き順の本来の目的は、テストで100点を取ることではなく、「文字をバランスよく、楽に、綺麗に書くこと」です。

60年前の国の妥協の歴史を知ると、テストの「バツ」に対する見方も、少し優しく変わってくる気がしませんか?






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